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SS企画 ―終章―

終章 ―全てを終えて―

「かんぱーい!」
 日もすっかり沈み、星星が瞬く空の下、かがり火に照らされた村人たちは、ジョッキを片手に一斉に叫んだ。
 村に現れたヌシ様は偽者だった。そして、ヌシ様を騙った悪党はすべて取り押さえた。
 そんな情報が村を駆け回ったのは、今日の昼過ぎ。一瞬信じられなかった村人たちだが、気絶し、捕縛された悪党たちを見て、懸念は確信に変わる。
 その後、急ピッチで準備が進められ、その日の夜―つまり今夜―例年通り収穫祭が行われることになったのだ。
 怪我人も多かったが、全てが解決した喜びと、何より、今回の事件解決に携わってくれた学生たちの協力もあり、無事収穫祭を執り行うことが出来たのだ。



「リアンさん、どうもお疲れ様でした」
「ふむ・・・まぁ悪くはなかったな」
 木にもたれかかり喧騒を眺めていたリアンに、エドウィンがグラスを差し出す。
「でも、ちょっと残念だったかな。もっと強いやつと戦えると思ったのに・・・って、不謹慎ですね」
 苦笑を浮かべるエドウィン。
「何も急いて強くなる必要などあるまい・・・それに、望まずともいずれ強者と見える事もあろう」
 いつものようにボソりと、だが、はっきりとした語彙でリアンが答える。
「そのとおりですね」
 落ち着いた射月の声が、そこに割って入った。
「僕も含めてですが、誰しもが未熟であり成長する余地があります。その可能性はどこまでも広がりますが、自分でそれを狭めてはいけません」
「えっと・・・どういうことですか?」
 その言葉に、真意を測りかねたエドウィンが問う。
「つまりは・・・」
「あ、こちらにいらしたんですね!」
 射月の言葉を中断したのは、アレンの声。三人を見つけて駆け寄ってきた彼女は、深々と頭を下げる。
「あの、今回は本当にありがとうございました!」
「いえいえ、これも世界平和のためですから」
「我が知識を生かしたまでだ。礼などいらん」
「あ、いえ、その・・・どう、いたし、まして・・・」
 三者三様の言葉を返す。頭を上げたアレンは、少し迷い、一番歳の近そうなエドウィンの手をとる。
「あの、また是非、この村に遊びに来てくださいね!私、精一杯歓迎しますから」
「・・・・・・・・・・・・」
 顔を間近に寄せられて請われたエドウィンは無言。そのまま、
「・・・・・・きゅぅ」
 頭から煙を吹いて倒れてしまう。彼が女性の苦手な弱点を克服できる日は、まだまだ遠そうだ。



「「「「「かんぱーい!」」」」」
 声を揃えて、五色のモヒカンたち――虹レンジャーの面々がジョッキを打ち鳴らす。
 結果的に宝石強盗のようになってしまったが、彼らは彼らで、治安の悪い街道を守ろうとしただけである、ということが判明し、今回の収穫祭への参加も許可されたのだった。
「しかしレッド、我らの敗因はなんであろうな?」
「何を言うブルー!それは虹レンジャーでありながら七人揃っていなかったからだ!そうだろう、グリーン?」
「え、えと・・・そうおもいます。だ、だから、何とかメンバーを集めないと。パープルさん、何かいい案は・・・?」
「そうねぇ、アタシの美貌を使えば、残りの二人なんてあっという間に集まるんじゃないかしら。ねぇ、イエロー?」
「・・・・・・」
 賑やかな5人組に、ちょこちょこと近づいていく小さな剣の花嫁が一人。
「あの・・・」
「む?どうした少女よ?」
 最初に反応したのはブルー。その反応に、おずおずとティアが問う。
「皆さんは、正義の味方なんですか?」
「そうだ!我らニジレンジャーは、日夜正義のために戦っているのだ!ちょっぴり友達が少ないけど、寂しくなんかないぞ!」
 レッドの堂々とした言葉に、ティアの表情が輝く。
「ボ、ボク、特撮ヒーローが大好きなんだ!まさか本物に会えるなんて感激!ね、サインして!」
 と、どこからともかく五枚の色紙とペンを取り出す。
 慣れないことに一瞬戸惑ったニジレンジャー達だが、それを受け取りサインしていく。
 レッドの乱雑だが熱いサインと、ブルーの秀麗なサインと、グリーンの自信なさげな小さなサインと、パープルのかわいらしい丸文字のサイン(ハートマーク付き)と、イエローの筆で書いたような達筆なサインとをもらい、さらに握手までしてもらって喜色満面のティア。
 そのまま意気投合し、親交を深める六人。そんななか、唐突にレッドが叫んだ。
「諸君!提案がある!どうかこの少女に、ニジレンジャーへの入隊してもらおうじゃないか!」
 その言葉に、一瞬面食らったティアは――



「うぅ・・・おなかすいたのじゃ・・・」
「どうして俺様たちがこんな目に・・・」
 それぞれが談笑し、用意された食事と飲み物に舌鼓を打つなか、ミュールとヴァレリーは隅っこで文字通り指をくわえて見ていた。
 未羅とアリシアの会話を盗み聞きし、さらには妙な妄想に繋げた罰として夕食抜きにされた彼女らは、収穫祭の料理すら食べさせてもらえないでいた。
「これというのも、貴様が口を滑らせたから・・・」
「何をいうか!おぬしが妙な妄想に走ったのが発端じゃろう!」
 空腹から、一触即発の空気を作る二人。
「何してるのかな?二人とも」
「喧嘩しちゃメッ、なの」
 かけられたアリシアと未羅の声に、なぜか正座でその場に座り込む二人。見上げれば、アリシアは両手にジョッキを、未羅は料理の乗ったトレーをそれぞれ持っている。
「うぅ・・・この上俺様たちの目の前でそれを食べるつもりか・・・」
「わらわが悪かった・・・反省しておるから、それだけは勘弁してほしいのじゃ・・・」
 その言葉に苦笑した二人は「はい」と声を揃えてそれらを差し出す。
「しょうがない、反省してるみたいだから許してあげる!」
「料理も飲み物もまだいっぱいあるの。あとで一緒に取りに行こう、なの」
 それらを受け取り、沈んでいたミュールとヴァレリーの顔が輝く。
「おぉ!流石は俺様の未来の嫁たち!気が利くではないか!」
 と、調子に乗って二人を抱きしめようとするヴァレリー。アリシアと未羅は左右に分かれてそれをかわすと、
「やっぱり・・・」
「懲りてないの!」
 どこからともなく取り出したハリセンで叩き伏せる。
「ぎにゃぁぁぁ!!」
 二人の少女ではなく、地面と熱い抱擁を交わしたヴァレリーを起こし、木に背を預けさせる。
「未羅!」
「はいなの!」
「お、おまえら、何をする!俺様に縛られて喜ぶ趣味は・・・あ、でも子のシュチエーションもなかなか・・・」
 などと言ってる間に、ぐるぐる巻きにされて拘束されてしまう。
「自業自得じゃ・・・」
 そう呟いたミュールと共に楽しむ三人の少女を、ただ眺めるだけしかできないヴァレリーだった。



「このたびはお世話になりましたな・・・」
「いえいえ、騎士として当然の勤めを果たしたのみですぞ」
 深々と頭を下げる長老に、ガートナが謙遜して答える。
「ところで・・・一つお願いがあるのですが、よろしいかな?」
「おぉ、恩人様のお願いじゃ。わしらに出来ることでしたら、何なりと」
「なに、大したことではないのです。今回の首謀者たち・・・あの野党たちの処遇を、私に任せていただきたいのですよ」
「はて?」
 長老が、その意外な願いに首を傾げるが、すぐに頷く。
「それは、望むところですじゃ。この村に置いておいては、また悪さをするやもしれませんからのう」
「それもそうですな。では、後は私にお任せくだされ」
 そう言って、長老に背を向けるガートナ。その口の端がかすかに歪んでいたことには、誰も気づかなかった。



 一夜明けて。朝靄の中、今回の一件に集ったメンバーは、最後の挨拶も済ませ、村の入り口に集まっていた。
「また会うこともあるだろう・・・」
「みんな、お疲れ様!また、どこかで会いましょう」
 リアンとエドウィンが、それぞれの乗ってきた白馬に跨る。
「大変だったけど、ボクも楽しかったよ!今度は、遊びに来たいな。みんなで!」
 無邪気に笑うティアの手には、ニジレンジャー達のサインと共に、ニジオレンジに(一方的に)任命された証である、イエロー作のオレンジ色の特攻服と釘バットが、大事そうに抱えられている。
「そろそろ契約者たちの任務も終わる頃でしょう。心配される前に戻りたいですね」
 と、微笑む射月はすでに馬車に乗り込んでいる。
「うぅ・・・俺様のハーレム計画第一歩が・・・」
「まだ懲りてないの・・・?」
「今度はハリセンじゃなくてメイスでやらなきゃダメかな・・・」
 ヴァレリーの呟きに、未羅とアリシアが剣呑な言葉を返す。
「いろいろあったが、楽しかったぞ。みんな、またわらわとあそぼぅ♪」
 そんなミュールの言葉を締めとして、
「では、出発しますぞ!」
 手綱を握るガートナが馬車を走らせ、リアンたちも馬を蹴る。



 こうして、小さな村で起きた小さな事件は幕を閉じた。知らぬものから見れば、それはありふれた物語でしかないのかもしれない。
 だが物語には、必ず主役と、その影に隠れてしまう者がいるものだ。そしてこの物語の幕を引いたのは、そうした影に隠れてしまいがちな者たちであることは、決して忘れてはならないのではないだろうか・・・



 なお、この事件から数日後、蒼空学園のとある一角で、人の悲鳴のような声が聞こえるようになったということを付け足しておく

fin
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