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SS企画 ―第一章―

第一章 ―合流・役割分担―

 シャンバラ地方東部。カナンとの国境線に広がるジャタの森の一角にある、フィーリル湖。その湖畔に作られた村に、大きな馬車が到着する。
 蒼空学園の校章が入った馬車から最初に降りてきたのは、数人の歳若い少女たち。
「わ!見て見て、綺麗な湖~!ここでキャンプとかしたら楽しそ~!・・・泳げないけど」
 真っ先に降りて無邪気にはしゃぐのは、剣の花嫁であるティア・ユースティ
「おいおい、俺様たちは遊びに来たわけではないぞ」
 続いて降りてきた、吸血鬼であるヴァレリー・ウェインがそれを諭す。その出で立ちは、男性なら思わず振り向かずにはいられないほど妖艶だが、口調は限りなく男っぽい。
「と、酒瓶を片手に言っても説得力はありませんがね?」
 射月が微笑を浮かべ指摘する。ヴァレリーの手にはワインの瓶が握られていて、その半分ほどはすでに消えている。
「硬いことを言うでない。楽しければよいではないか」
 歳若い外見に似合わぬ老人口調で、魔女ミュール・メイルが告げる。
「いえいえ、行為自体を否定はしませんよ。ですが、今は一応任務中。快楽主義もかまいませんが、肝心の時に動けないのではどうにもなりません。ですので、ほどほどに・・・」
「えぇい!おぬし、若造のくせに話が長いわ!」
 回りくどい説明に癇癪を起こしたミュール。その光景に、射月は肩をすくめる。
「やれやれ・・・この歳になると、長時間の馬車移動は堪えますな・・・」
 年寄り臭い動作で腰を叩くのは、剣の花嫁(?)であるガートナ・トライストル。40代半ばに見える彼は、この集団の中で一人異色の存在であり、見方によっては子沢山の父親のようにも見える。
「はぁ・・・焔ぁ・・・」
「アリシアちゃん、そろそろ元気出して?」
 最後に降りてきたのは、いまだ元気のないアリシアと、それを励ます未羅。そして、
「ようこそ、皆さん。ここが私の住む村です」
 依頼人であり、この村の住人アレン・ルトゥーリア。短めに揃えられた茶髪を揺らし、7人に村を紹介する。その後ろに広がるのは、湖畔沿いの長閑な農村・・・なのだが、ところどころ畑が荒れていたり、住居が半焼していたり、包帯を巻いた人が歩いていたりもする。
「して、アレン君。私たち七人だけで村を守るというのは、いささか骨が折れると思ますがな?」
「あ、はい。そのことなら、後ニ名薔薇の学舎からも来ていただけるとのことなのですが・・・」
 ガートナの問いに答えたアレンが、周囲を見渡す。と、まるで計ったかのようなタイミングで馬の嘶きが響く。
 馬蹄の響きと共に現れたのは、2頭の白馬。1頭を駆るのは、黒マントを風に靡かせるリアン。もう1頭には焦茶のツンツンヘアーをした、若きヴァルキリーの少年、エドウィン・スカイラートが跨っている。
「我が名はリアン・エテルニーテ。我が智謀を披露するために参上した」
 下馬し、知的な一礼と共に自己紹介を行うリアン。だがその言葉はやや聞き取りづらい。
「俺はエドウィン・スカイラート。ひょっとしたら、強い奴と戦えるかもしれないから、応援にきたんだよ」
 リアンとは対照的に、美しい声で告げるエドウィン。すでに到着していた蒼学メンバーも、各々自己紹介を済ます。
「そ・・・それにしても、蒼学メンバーはずいぶん、じょ、女性が多いんだね・・・」
 周囲を見渡し、僅かに上ずった声を上げるエドウィン。戦場で育った彼は、女性の相手が苦手だった。
「何を言う、俺様は大満足だぞ!ただ、残念なのは俺様好みの巨乳の娘がいないということだな。しかしたまにはロリというのも・・・」
「そういうことやってる場合じゃないでしょ!」
 スパーンッという小気味のいい音と共に、ティアの胸を弄ろうとしていたヴァレリーの後頭部に、アリシアがどこからともなく取り出したハリセンがクリーンヒットする。
「とりあえず、どこか落ち着ける場所はないかの?わらわは長旅で疲れたのじゃ」
「・・・あ、はい!えっと、こっちに酒場が・・・」
 事態についていけず、あっけに取られていたアレンは我に帰ると、村の中にある大きな建物を目指し歩き出す。
「・・・いたいのいたいのとんでけ、なの」
 事態の推移を静かに見守っていた未羅が、ヴァレリーの頭を撫でる。ここぞとばかりにその小さな身体に抱きつこうとするが、華麗に回避されたのは言うまでもない。



 アレンに案内された建物は、木造の大きな建物だった。1階には30ほどの椅子といくつかのテーブルが並び、昼は食堂、夜は酒場として使われているようだった。
「それで、爺さんが最初にヌシ様が出たって言い出したのか?」
 ヴァレリーの威圧的な視線が、白髪の老人を見据える。いまこの広い部屋には、集まった9人の学生たちとアレン。そして村の長老である老人だった。
「左様ですじゃ・・・わしとて長く生きておるが、ヌシ様を直接見たのは初めてですじゃ・・・」
「では、そのときの状況を詳しく話してもらえますか?」
 丁寧な口調で問うは射月。いつもどおりの柔和な笑みを浮かべている。
「えぇ・・・あれは、およそ半月ほど前。わしらが収穫祭の準備をしておったときじゃった・・・」
 長老の話はこうだ。半月ほど前、村人たちが収穫祭の準備に追われていた頃に、霧が立ち込め始めた。昔からそれは「ヌシ様が居られる証」とされていたため、村人たちは一段と張り切り、準備を急いだ。
 だが、その霧の中に突如巨大な影が浮かび上がり、遠雷のような声が響いた。『空腹ではない。今年の収穫祭は宝石を供物とせよ』という内容だったらしい。
「巨大な影・・・?ってことは、長老さん。ヌシ様の姿を、本当は誰も見てないってこと?それじゃ、ハリボテとかって可能性も・・・」
「はい・・・私たちも、ヌシ様の突然の要求を怪しんで、霧が晴れてすぐに辺りを捜索しました。でも、そんな痕跡はどこにも・・・」
 エドウィンの問いに、アレンが悲しげな表情で答える。それだけで、エドウィンは二の句が告げなかった。
「もしヌシ様のお怒りに触れれば、わしらに災いが降りかかるとされておるのです・・・現に、ここまでに村の様子を見なさったじゃろう?」
 それぞれが、ここまでに見たものを思い出す。荒れた畑に焼けた家。割れた窓に怪我をした村人。
「お願いします・・・このままでは私たちの村は、この先どんな災いに見舞われるか・・・」
「永遠などというものは無いのだよ。明けぬ夜も、覚めぬ悪夢もない」
 アレンの懇願に、リアンがボソりと返す。はっきり言えば格好いい場面なのだが・・・ 
 その代わりと言わんばかりに射月が立ち上がり、はっきりとした声で告げる。
「お任せください。それに、僕たちが何とかしなければ、確実に世界は崩壊するでしょう?」
「いや、世界は関係ないと思うんだけど?」
 ティアの冷静なツッコミはスルーらしい。
「あぁ、では諸君。ひとまず、役割分担を決めますぞ」
 最年長であるガートナが手を打ち、脱線しがちなメンバーを纏める。各々が近くの人間や、気の会う友人と話し始める。そんな光景をアレンと長老は、期待と不安の入り混じった目で見つめていた。



「僕はやはり、ヌシ様の行動が気になりますね。唐突の変貌に、村人が見たという怪しい人影。これはつまり・・・」
「ヌシ様が偽者、と考えるのが妥当でありますな」
 射月の言葉をセーウェルスが継ぐ。それに呼応したのはヴァレリー。
「俺様もそう思っていたところだ。どれ、ここはひとつヌシ様がいるという洞窟に侵入してだな・・・」
「わらわも行くのじゃ!」
 その提案に、挙手して賛成するミュール。「面白そう」という理由と興味半分で参加した彼女は、実に楽しそうだ。
「そうかそうか、では俺様と二人っきりで薄暗い洞窟へ・・・」
「行かせるのは危険な気もしますので、僕も同行しましょう。ガートナさん、あなたは?」
 妖しく目を光らせるヴァレリーを射月がやんわりと止め、ガートナに向き直る。ガートナは「ふむ・・・」と一瞬考えるそぶりを見せる。
「私は少し、試したいことがありますのでな。少し別行動を取らせていただきたい」
 その答えに、射月は笑顔で頷く。
「しかしじゃな・・・わらわは洞窟の場所なぞ知らぬぞ?どうするつもりじゃ?」
「それについては・・・」
 ミュールの疑問に応えるように、射月はアレンに視線を向ける。その意図に気づいたアレンが頷く。
「わかりました。私がご案内します」
「いかんぞアレン!ヌシ様の洞窟はわしらにとっては禁忌とされておることは知っておろう。入ることなど、まかりならん!」
「しかし長老・・・!」
「では、こうしてはいかがですかな?」
 声を荒げる二人の間に、ガートナが割って入る。
「アレン君には、洞窟の入り口まで案内してもらい、中には入らない。これなら、禁忌を犯すことにはならないでしょう。潜入班が戻るまでは、私が護衛いたしますぞ」
 その言葉に、アレンは力強く、長老はしかたないと頷く。
「よし、では決まりだな。皆、俺様について来い!」
 ヴァレリーの言葉を締めとして、【洞窟侵入班】は行動に移るのだった。



「ねぇ、リアンさん。リアンさんはどうするの?」
「我はヌシとやらの正体が気になる」
「じゃあ、洞窟に行くんだ?」
「行かぬ。面倒であろうが。我は村に残り、現れたヌシとやらを調べる」
「じゃあ、僕と一緒だね。僕は、強い奴と戦いたくてここに来たんだけど、探さなくても待ってればヌシ様が来るかなって」
 それぞれの理由で、村に残ることを決めたリアンとエドウィンの薔薇学コンビ。その背後に小さな影が迫る。
「ねぇねぇ、二人とも村に残るんだよね?じゃあボクと一緒だ!がんばろーね!」
 無邪気な声を上げたのはティア。そんな彼女を、リアンは煩わしそうに、エドウィンは僅かに緊張した面持ちで見つめる。
「ボクは村の人を治療しながら、いろんな情報を聞いて回ろうと思うんだけど・・・お手伝いしてくれないかな?」
「面倒だ・・・が、おまえが情報を持ってくるならば、考えるぐらいはしてやろう」
「じゃ、じゃあ、僕は一緒に行こうかな。よろしくね、ティアさん」
「うん、よろしくね~!」
 女性への免疫のないエドウィンだが、子供っぽいティアには幾分マシのようだった。この機会を弱点克服の一歩にしようと考えているとかいないとか。
「では、我はここで待っていてやる。行って来い」
「はーい!」
「では、いってきます」
 リアンが促し、2人は村人の元へ向かう。【護衛・調査班】の活動が始まった。



「ほ、本当に、大丈夫なんでしょうね?」
「だいじょーぶ!私を信じなさい!」
 不安げな村人の言葉に、アリシアが薄い胸を張って答える。その後ろでは、未羅が黙々と小型飛空挺のチェックを行っていた。
 どうしてこうなったんだろう・・・村人たちの不安を解消するには、少し時間を巻き戻す必要がある。

「アリシアちゃんはどうするの?」
 それぞれが己の役割を決める中、未羅は親友であるアリシアにそう問いかけた。対するアリシアは、子供っぽい仕草で腕組みをしながら考える。
「ん~・・・村の人を治療して回るのもいいけど・・・宝石も見てみたいかも!」
「じゃあ、ここまで運ぶ?でも、私たち二人で大丈夫なの?」
「だいじょーぶ!私を信じて!」
 未羅の疑問を根拠のない自身で一蹴し、二人は【宝石護送班】として動くことにした。

 そうして時間は今に至る。いくら機昌姫や剣の花嫁とはいえ、12~3歳にしか見えない少女たちが、はたして治安の悪い道を抜けて帰ってこれるのか。村人たちが不安に思うのも当然である。
 だが、赤いポニーテールを揺らし、大仰な仕草で説得しているアリシアを見ていると村人たちも根拠の無い自信に満ち溢れてくるから、不思議なものである。
「アリシアちゃん、準備できたよ」
「じゃあ早速しゅっぱーつ!あ、操縦は私が・・・」
「ダメ」
「えー、何でー?」
「焔さんから、アリシアちゃんは方向音痴だから任せちゃダメって言われてるの」
「むー・・・焔が私を信じてくれない・・・」
 文句を言いながらも、未羅の飛空挺へと乗り込む。
「行くよ?」
 駆動音と共に飛空挺が起動。浮遊しながら、アリシアが村人たちに大きく手を振る。そのまま加速。
 やがて小さくなっていくその姿を、村人たちは不安そうな表情で見送っていた。
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