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SS企画 ―第三章―

第三章 ―ヌシ様現る― 【護衛・調査班】

「ありがとう、お嬢ちゃん。楽になったよ」
 そう言って、壮年の男性が柔らかい笑みを浮かべる。左腕の傷はすっかり塞がっていた
「どういたしまして。他に、怪我をしてる人はいない?」
 そう呼びかけるティアの周りには、怪我をした村人と、治してもらった村人でごった返していた
「これは・・・矢傷だね。、いつ、どうやって受けたか、教えてもらえませんか?」
 集まった人々の傷の具合や、受けた状況などを聞いて回るのはエドウィン。幸い、怪我人は男性が多いので、緊張することもないようだ
「あぁ、この間、ヌシ様が現れた際にね。たくさんの炎とか矢とか石とかが飛んできて、大変だったんだよ」
「矢や石・・・ですか?」
 村人の答えに、エドウィンは眉を顰める
「そうだよ。あそこの畑や、あの家なんかも、全部ヌシ様のお怒りでああなってしまったんだ」
 村人が指し示すのは、石だらけで荒れてしまった畑や、半焼した家。
「あの、ヌシ様って、どんな姿なの?」
 一通り治療を終えたティアが聞くと、
「あぁ、ヌシ様は・・・」
「大きな蛇のような姿をしているらしいわよ」
「といっても、わしらですら見たことはないがの・・・」
 周囲の村人たちが口々に答える。
「統合すると、ヌシは蛇のような姿をしているとされ、霧が立ち込めるときに現れるとされているようだ」
 突然の声に、その場の全員が振り返る。心底面倒くさそうに歩きながら、リアンは続ける。
「収穫祭の夜に捧げられる食料は、一家族が数週間は食いつなげるほどの量だ。それらが一夜にしてなくなる事から、主の存在は信じられているようだな」
「リアンさん、どうしてここに?」
「おまえらの帰りが遅いから、我がわざわざ出向いて聞き込んでやったのだ」
 驚くエドウィンの問いに、リアンが答える。
「んっと、そんなにたくさんの食料がなくなるってことは、森の動物でもなさそうだし・・・やっぱり、ヌシ様ってほんとにいるの?」
「存在の是非はともかく、不可解な行動であるのは確かだな。我が思うに・・・」
 ティアの疑問に答えようとしたリアンが、言葉を切る。その周囲には、霧が立ち込め始めていた。



 深い霧が立ち込める中、たくさんの人間が蠢いている。ある者は立ち竦み、ある者は物陰を求めて惑う。だが、それら幾重の瞳が見据えるのは、霧の中のただ一点。浮かび上がった、黒い影。その姿は高く天へと伸び、大木の幹のようだ。その頂点、頭と思われる部分には、二つの剣呑な光が宿っている。その姿はまさに、巨大な蛇であった。
「我への貢物はまだ届かぬか?」
 突如として遠雷のような声が響く。その声に、村人の一人が跪き、怯えた様子で答える。
「も、もうしばらくお待ちを、ヌシ様!いま、宝石を取りに行っておりますので・・・」
「ならぬ!我の怒りに触れればどうなるかはわかっておろう?今すぐ貢物を持てい!」
「そ、そのように申されましても・・・ギャッ」
 答えた村人の肩を、拳大の石が捉え、痛みにうめく。
「我はこの湖のヌシである。口答えなど、断じて許さん!我が怒りを知れい!」
 言葉と共に、影の周りにたくさんの炎が浮かび上がる。
「危ない!みなさん、逃げて!」
 とっさに叫んだのはエドウィン。剣を抜き、先ほど倒れた村人に飛来した石を砕く。
「立てる?はやく、向こうの物陰に・・・」
 その隙にティアが、手早く村人を治療し避難させる。
「ふむ・・・」
 静かに立ち尽くすリアンは、火術を展開し、自分に飛来した数本の矢を焼き払う。
 右往左往する村人たちを背に、三人がそれぞれの武器を構える。それを目掛けて、石が、矢が、火球が飛来する。
「如何せん数が多いな・・・万能なる力よ、我が手に集い敵を穿て。雷術!」
 リアンが広範囲に発した稲妻の弾幕が、その大半を撃ち落す。残った物も人や家のない場所へと落ち、被害は出ない。はずだった。
 それに気づいたティアが、とっさに走り出す。その視線の先には、逃げ遅れたのか、喧騒に怯え、蹲ってしまっている5歳ほどの小さな子供。そして、それに向かって迫る火球。
「大丈夫?怪我とかしてない?さ、早く・・・」
 炎よりも先に追いついたティアが、子供を抱き起こし、逃がそうとする。だが、その眼前にまで炎は迫っていた。逃げられない。そう思い、せめて子供だけでも守ろうと、その小さな体を抱きしめる。
「うおああああああああ!」
 咆哮と共に、エドウィンがバーストダッシュで疾走。颶風となり二人の前に立ちはだかると、炎を剣で受け止める。カルスノウトに込められた魔力が炎を徐々に霧散させていく。だが、
「ぐっ!」
 完全には止めきれず、余波が彼の身を焦がす。致命傷ではないが、決して軽くもない傷に、エドウィンは片膝をつく。
「だ、大丈夫!?」
「俺のことはいいから!早く、その子を!」
 負傷したエドウィンを癒そうとするティアを制し、子供を逃がすように促す。
「ふははははは!我が怒りを思い知ったか!さぁ、手早く貢物を用意するのだな」
 再び遠雷のような声が響き、霧と共に影が消え失せていく。
「待て・・・ぐっ・・・」
 エドウィンが立ち上がり追おうとするものの、痛みに呻き、再び膝をつく。その間に、霧と影は完全に消えてしまっていた。
「ふむ・・・妙だな」
 エドウィンを癒すティアの傍で、周囲を見渡していたリアンが呟く。
「妙?」
「影はまったく動かず飛び道具のみの攻撃・・・それも物体や炎を使った直接的な・・・しかし形跡は・・・」
 ティアの疑問を無視し、リアンが一人ぶつぶつと呟いている。そんなときだった。
「おーい!宝石が届いたぞー!」
 村人の、そんな声が響いたのは。
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