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SS企画 ―第四章―

第四章 ―洞窟の秘密と一人の思惑― 【洞窟侵入班】

 森の中、湖のほとりを歩くことおよそ30分ほど。目の前には、大きな洞窟が口をあけていた。その前には祠と祭壇が置かれている。
「いつもは収穫祭の夜に、この祭壇に供物を捧げるんです」
 【洞窟侵入班】に同行しているアレンが説明する。
「なるほど、確かに大きな物を置けそうな形状ですね。作りもしっかりしている」
「たくさんの食べ物なのじゃろう?わらわも少しもらいに来ていいかの?」
「ダメです。ヌシ様のなんですから」
 感心する射月の傍らで、今にも涎を垂らしそうなミュールがアレンに窘められる。「それに、今年は・・・」と、続けそうになり、その表情が翳る。
「そんなことより、早く入らぬか?俺様は日が暮れるまでに戻りたいのだが」
 夜の愉しみが減ってしまう。と、付け加えるヴァレリー。何が愉しみなのかは、あえて誰もツッコマなかった。
「そうですね、ですが、私は中には入れませんので・・・」
「ご安心を。私がしかとお守りしますぞ」
 アレンの傍らで、ガートナが鉄杖を掲げる。その姿は中世の宗教騎士のようで、とても頼もしく見えた。
「いや、ここはやはり配置を変えて、俺様がしっとりとアレンの護衛を・・・」
「謹んでご遠慮いたします」
「そう遠慮するな。悪いようにはせん、俺様の物になれ」
 怪しい笑みを浮かべて、アレンに近づくヴァレリーを制するように、射月が口を開く。
「では、予定通り僕たちが洞窟内を調査。ガートナさんに、アレンさんの護衛をしていただくということで」
「おい、おまえ。空気が読めないと言われたことはないか?」
「何のことでしょうか」
 ヴァレリーの言葉も意に介さず。いつもの微笑を浮かべる射月。その二人の腕を、ミュールが引っ張る。
「早く行くのじゃ。このままだとわらわは退屈で死んでしまうのじゃ」
「退屈で死ぬという理由はいささか分かりかねますが、早く行くというのには賛成ですね」
 射月の言葉を合図に、3人は洞窟に入っていく。ヴァレリーが最後に残した「いつかモノにしてやる・・・」という不穏な呟きを残して。



「これは・・・なかなか珍しい形状ですね」
 洞窟の先頭を歩く射月が呟く。中は思いのほか広く、大人三人が並んで歩いても十分余裕があるほどだった。
「わらわもいろいろな場所を見てきたが、このような丸い洞窟は初めてじゃのう」
 ミュールの言葉どおり、洞窟の内部は円形だった。通常天然洞窟は、楕円形や半円形であることが多いが、ここはまるで、大きな筒の中を歩いてるような錯覚に陥る。
「しかし随分歩いたが、どこまで続くのだ。この洞窟は」
 火術をともし、明かりを確保しているヴァレリーがぼやく。だがそれも無理はない。洞窟に入って30分ほど、ずっと歩き詰めなのだ。枝分かれこそしていないものの、本当に前に進んでいるのかと不安になってくる。
「たしかにのう。じゃが、前には進んでおるぞ?周りの壁が少しづつ古くなっておるからのう」
 ミュールの言葉に二人は壁を眺めるが、まったく分からなかった。小さく見えても、流石は長き時を生きる魔女。ということだろう。
 その言葉を最後に、三人は無言で、変化のない道を歩き続ける。だが、やがて周囲の空気に水の匂いが混ざりはじめる。
「地底湖・・・というには少し小さいな」
 やがてたどり着いた、今までよりも少し広い空間。洞窟の壁は、そこに溜まった水の中に続いていた。水はとても美しく透き通っているが、深さゆえに明かりをかざしても底が見えない。
「ここまで来た方角と距離から・・・これは恐らく、フィーリル湖に通じているんでしょうね」
 溜まった水を眺め、射月がそう結論付ける。
「じゃが、行き止まりじゃのう。何かおると期待しておったのに・・・」
「いや、案外期待はずれでもなさそうだぞ。・・・見ろ」
 がっかりとうな垂れるミュールの言葉をヴァレリーが遮る。彼女のかざした明かりの先、
「人間の形跡・・・ですか。しかも複数の」
 射月の言葉どおり、そこに散らばっているのはスナック菓子の袋や、インスタント食品の容器など。誰かが生活していた形跡だった。
「これで見えてきましたね。事件の真相が。恐らく、ヌシ様の奇怪な行動は」
「焦るな。まだこれだけでは決定的なものが足りてないぞ。俺様たちの情報だけで結論を出すのは愚行だ」
「それもそうですね。では、ひとまず戻るとしましょうか」
「また歩いて戻るのかえ・・・?誰かわらわをおぶってくれんかの・・・?」
 疲れたように吐き出されたミュールの言葉を華麗に無視し、二人は残された形跡を集めると、来た道を戻り始めた。



「ふむ、こんなものでよいでしょう。アレン君、ご苦労様でしたな」
「いえ、かまいませんが・・・なんに使うんですか?これ」
「なに、少し個人的な目的のためですよ。・・・おぉ、ちょうど皆も戻ってきたようですな」
 洞窟に入っていた三人を出迎えたアレンたちは、外は特に何事もなかったこと、中では人のいた形跡を見つけたことを報告しあうと、ガートナを先頭に村へと向かった。そのとき、なぜか蛇行しながら歩いていたが、その理由を彼は決して話さなかったという。
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