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SS企画 ―第五章二篇―

 一方その頃

村で留守番をしていた未羅とアリシアはというと・・・
「だ、ダメ、アリシアちゃん。ダメなの」
「えー、ここをこうするとイイって、さっき言ったじゃん」
「そ、そんなに乱暴にしちゃダメなの・・・」
「むぅ、だってそんなの性に合わないよ・・・えい!」
「あっ!そこ、そんな風にしちゃ・・・んっ」
「んー、じゃあここをこうするのは?」
「ふえぇ、それはもっとだめぇ・・・」
「うぅ・・・じゃあ、こんな感じ?」
「うん、それ、すごくイイの・・・」
 酒場の二階。アリシアたちにあてがわれた客室から、その声は響いていた。
「よし、じゃあ最後は・・・」
「うん・・・すごくイイの!」
 ギシギシとベッドのきしむ音。二人の少女の荒い息遣いが、妖艶なハーモニーを奏でる。
「アリシアちゃん・・・初めてなのにすごく上手だったの・・・」
「えへへー、頑張ったもんね!」
 息の上がった二人の前には、綺麗に整えられたベッド。
「未羅、わざわざありがとね」
「ううん、いいの。アリシアちゃんにベッドメイクを教えるのは、約束だったの」
 未羅の言葉に呼応するように、突如扉がひらき、ヴァレリーとミュールが部屋へと倒れこむ。
「・・・なにしてんの?二人とも」
「まだ寝るには早い時間なの」
「い、いや、なに、俺様たちのほうは大体片がついたしな、心配だから、先に戻ってきたのだ!」
「そ、そうじゃ、決して妖しい声に誘われて、盗み聞きなどしておったわけではないぞ?」
 ミュールの言葉に、ヴァレリーがあわてて口を塞ぐが、時すでに遅し。額に怒りマークでも浮かんでそうな笑顔を浮かべたまま、アリシアと未羅が静かに死刑宣告を下す。
「二人とも・・・」「夕ごはん・・・抜きなの」
 がっくりとうな垂れる二人。そこに、
「何をしておるのだ・・・?」
 現れたのはリアン。その背後には、怪訝な表情のアレンが立っていた。
「あの・・・大体片が付いたって聞いたんですけど・・・いったい、どうなったんですか?」



 湖のほとりの森の中、きつく漂ってくる臭気と、点々と地に落ちる赤い痕跡をたどって、四人が疾駆する。
「確かに優れものですね、さっきのボール」
「はっはっは、そうでしょうそうでしょう」
 エドウィンの言葉に、ガートナが心底嬉しそうに笑う。「でも・・・」と漏らしたのはティア。
「この匂いは・・・もうちょっと改善できないの?」
 その言葉どおり、鼻をつまむどころか、呼吸すらやめてしまいたいほどの強烈な臭気が、あたり一面に漂っている。そのためか、周囲に生き物の気配はない。
「慣れればなんてことありませんよ。・・・そろそろ追いつくでしょうか?」
 いつもどおりの笑みを浮かべた射月がそれに答える。それとほぼ同時に、全員がその異変に気づいた。
「霧・・・ですな」
 ガートナの言葉どおり、周囲には霧が立ち込め始めている。それも村で見たものよりもはるかに濃い。
「視界が悪くなるな・・・みんな、俺が先頭を歩きます。はぐれないでくださいね」
「では、僕は殿を務めましょう」
 エドウィンが前、射月が後ろを、それぞれ警戒しながら進む。やがて、
「・・・いた」
 エドウィンの声に、全員が緊張感を高める。濃霧の中、そこだけがはっきりと、不自然に、赤く浮かび上がっている。
 だが、それは目線よりも随分低い位置にあり、動く気配がない。まるで座り込んでいるかのようだ。
「では、行きますぞ・・・1、2の3!」
 ガートナの合図に、全員が一斉に飛び出し、男を包囲する。だが、
「観念・・・してるみたいだね、すでに」
「というか、怯えてる・・・?」
 ティアの指摘どおり、地面に座り込んだ男は驚愕の表情を浮かべ、焦点の定まらぬ視線をさまよわせ、歯をガチガチと鳴らしている。
「ば・・・ばば・・・・ばけ・・・・・ば・・・・・」
 その喉からは、声にならない声が漏れ出していた。
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